話題になっている作品です。
隣の家から喧嘩の叫び声や子供の泣き声など聞こえてきたら、あなたは和気あいあいとした団らんの時間を過ごせますか?
アカデミー賞国際長編映画賞やカンヌ映画祭グランプリに輝いたこの作品は、そのような状況下でも家族だんらんを過せる一家を描いています。
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でもその状況が極限ともいえるんです。
歴史に残る虐殺が行われたアウシュビッツ強制収容所と所長一家の邸宅です。(上半分濃い灰色ポスターが印象的)
作品には虐殺など目をふさぎたくなるようなシーンは全く出てきません。
所長一家の豊かで優雅な生活が淡々と映し出されるだけです。でも壁1枚を隔てた先がアウシュビッツ強制収容所です。プールに興じる庭風景の背後に収容所の建屋が写ったり、煙が上がったり、アカデミー賞音響賞に輝いた音の使われ方で、アウシュビッツ強制収容所の惨状を意識させられます。
アカデミー作品賞に輝いた『シンドラーのリスト』の記憶が呼び覚まされて、壁を挟んだ際の異常さが増幅されました。
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物語りが進むにつれ、アウシュビッツ強制収容所の隣で平然と日々を過ごすその家族への異常さにより唖然とします。でも考えたら他人事ではありません。
今世界で起きている戦争や苦しみあっても団らんを過ごしている私たちにも向けられているのです。
作品を観た日比谷の街がいつも以上に平和に見えました。
映画という芸術の形をしたメッセージ。私たちの関心領域を問われているようです。(上映中)