カンヌ国際映画祭パルムドール受賞、現地本日発表のアカデミー作品賞にもノミネートされている作品です。
この作品の凄いところは、脚本、演出、編集、音楽、演技という映画技術要素の力が結集されているところにあります。
雪のフランスアルプスにある山荘に住む父、母、息子。ある日、視覚障がいをもつ11歳の息子が血を流して倒れていた父親を発見し、悲鳴を聞いた母親が救急車を要請するが、父親はすでに亡くなっていた。当初は自殺による転落死と思われたが不審もある。その真相はいかに。
その真相究明の表現仕方が見事でまさに『落下の解剖学』、解剖するがごとく「え~どうなる、どうなる」という気持ちを持ち続けさせてくれます。父の顔、夫の顔、男の顔、母の顔。妻の顔、女の顔、息子の顔、男の子の顔、容疑者の顔、被害者家族の顔、遺族の顔……人間一人、いろいろな顔を持っていることが脚本、演出、編集、音楽、演技で浮かび上がり、そこにサスペンス感あふれる人間ドラマが展開します。
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少し興奮しつつ鑑賞後にランチをし冷静になったら、「なにこの話の内容。しまった、やられた~」という思いも出てきたのです。
たとえば、回想シーンで声だけ聴かせていたらいつ間にか映像になり肝心なところは声だけにして観客に想像など、これは舞台では出来ない。映画技術要素あってこそ成立した世界です。カンヌ国際映画祭パルムドールが相応しい『落下の解剖学』です。
(上映中)
2023年:フランス、監督:ジュスティーヌ・トリエ、主演:サンドラ・ヒュラー